「発表会の照明案の書き方は?」
「舞台照明の種類について知りたい!」
今回は、このような疑問について解説していきます!
発表会や公演前に必要になってくるのが照明案ですよね。
でも、どうやって書いたらいいのかわからないという声もよく聞きます。
そこで本記事では、舞台照明として働いた経験がある筆者が、ダンサーや指導者が知っておくと便利な舞台照明の知識をご紹介していきます!
照明は、頑張って作った作品に最後に魔法をかけてくれる存在!しっかり要望を伝えられるようにしよう!
筆者の経歴
この記事を書いている筆者はダンス歴21年!
ダンサーとして、小中大規模の劇場からアリーナ級のホール、野外やライブハウスまで、様々なステージを経験してきました。
また裏方スタッフとして、照明や音響・舞台監督・受付や子供たちのサポート等、舞台全般に関わる仕事を10年以上経験しています。
ダンサーとしても、舞台照明としても仕事をしてきた筆者が、ダンサーが知っておくと便利な舞台照明の基本をお伝えしていきます!
そもそも舞台照明とは
舞台照明は、舞台を光と闇によって演出する照明技術の事をいいます。
この時使用されている、照明機材や調光用の装置、設備などをまとめて「舞台照明」と呼びます。
また、舞台照明に関わる人たちの事を「舞台照明家」と呼びます。
ダンサー側からすると「照明さん」と呼んでいる人たちですね!
舞台照明に関わる人
「舞台照明家」と言っても、発表会当日には沢山の照明スタッフさんがいて、それぞれが自分の持ち場で働いています。
ざっくりですが、一般的な発表会ではこんな感じです。
- 照明デザイナー
- 調光
- ピンスポット
- ステージ
それぞれ簡単にご紹介します。
照明デザイナー(プランナー)
舞台照明さんの中でリーダー的存在なのがデザイナー(または照明プランナーと呼ぶ)さんです。
ダンスの発表会の前には「スタッフ見せ」「スタッフ下見」のように、スタジオにスタッフさんを呼んで事前に作品を見てもらう機会も多いと思います。
この際に、ダンサーが渡す照明案や要望を聞いて、発表会の劇場の設備や予算を考慮しながら照明プランを考えてくれるのがデザイナー・プランナーさんの仕事です。
最近は映像だけ送る場合も多いかと思いますが、その場合はその映像を送る相手がデザイナー・プランナーさんです。
もし、発表会までに構成や要望の大きな変更があったり、当日変更したい箇所が出てきた場合は、デザイナー・プランナーさんにお願いするようにしましょう。
調光
発表会当日、実際に照明を操作するのが調光さんです。
照明デザイナーさんが事前に頭の中で照明を作り、プログラミングしてきたものを、専用の機械(調光卓)で操作するお仕事です。
卓によって機能は様々ですが、照明が切り替わるタイミングを把握し、そのタイミングに合わせて次の照明を出してくれます。
会社や人にもよりますが、デザイナーさんが調光もこなす場合もあります。
ピンスポット(センター)
ピンスポットを簡単に説明すると、コンサートなどで人を追いかける丸いスポットライトの事です。
これは、1つ1つ照明さんが細かい操作をしてくれているモノなんです。
かなり高い技術が必要とされる、まさにプロの技です!
慣れるまでは難しく、新人時代は泣きながら練習しました。
ステージ
最後に紹介するのがステージ担当さんです。
最も出演者やステージにいるスタッフさんは、何かトラブルがあればすぐに対応する神スキルの持ち主!
また、照明はとっても危険な機材が多いので、出演者が誤って触ってけがをしないように気を付けてくれています。
その他
劇場の規模によって、ここまでご紹介したスタッフさんより多くの人数が必要になる事もあります。
主にデザイナーさんが指揮をとる事には変わりありませんが、ダンス発表会の規模ならばだいたいこのくらいになると思います。
舞台照明にできること
舞台照明は、ステージを光と闇で演出してくれます。
様々な色でダンサーを照らしてくれたり、いろんな角度に設置した照明でダンサーの表情に明暗を付けてくれたりします。
また、衣装が引き立つような色を考えてくれたり、音やタイミングに合わせて照明をつけたり消したりしてくれます。
しっかり要望を伝えたり、演出の相談をしてみるのもおすすめです。
舞台照明にできないこと
舞台照明には、どうしてもできないことがいくつかあります。
照明デザイナーさんとの嫌なトラブルを防ぐためにも、要望を出すダンサー自身が最低限の知識や理解を持っておくのはとっても大切だと考えています。
そんな筆者が、実際にお断りしたのはこんな要望でした。
- 茶色や黒など、そもそも光では出せない色の要望
- コンマ単位の照明の変化(機材的に不可能)
- 劇場の設備や予算的に不可能な照明要望
- 本番直前の急な照明変更
それぞれ簡単に紹介していきます。
茶色や黒など、そもそも光では出せない色の要望
照明には、どうしても出せない色があります。
その中でも、要望された経験がおおいのが茶色や黒です。
照明には「光の三原色」で出せる色しか作ることができません。
要望を出していた先生には、当日しっかり説明し、別の色で対応しました。
コンマ単位の照明の変化(機材的に不可能)
LEDを使用した場合は大丈夫なことも多いのですが、それ以外の「一般照明」という機材では、性質上照明のオンとオフに時間がかかります。
主催者側の予算的にLED照明を使用できない場合は、早い照明の切り替えにもちょっとした時間がかかりますので、そんなことも把握しておくと良いかもしれません。
照明さんは、予算内でできることを最大限やってくれているはず!
劇場の設備や予算的に不可能な照明要望
例えば、「このシーンでピンスポットを使ってほしい!」という要望があるとします。
でも劇場の中には、ピンスポットの設備がない所もあるんです。
そうなると、いくら照明さんでもこの要望に応えることができません。
本番直前の急な照明変更
よくあるのですが、本番10分前になって「上手からの照明って要望出したんですが、ここは下手からに変えてください!」などと伝えに来る人がいました。
でも、照明のプログラミングはそんなに簡単に変えられるものではありません。
そのため、こういう場合はできる時は対応しますし、劇場の照明卓的に不可能な場合はお断りするしかないのが現実です。
当日になって「イメージと違うかも」と思うところがあれば、ゲネプロや休憩などの段階で照明さんに伝えておくと良いと思います!
知っておきたい舞台照明の種類
ここからは、ダンサーも知っておくと便利な照明の種類をご紹介していきます!
少しでもわかりやすくなればと、イラストを描いてみました。
(注)昔から絵の才能がない筆者の最大限です…
ホリゾントライト
背景の色の事!
背景に色を付けたい場合は、「ホリゾントライト」の色を出してもらいましょう。
ホリゾントを使用することで、作品のテーマがより伝わりやすくなりますし、色を変化させることで、雰囲気をガラッと変える効果があります。
劇場の構造や発表会によっては、ホリゾント幕を使用せず黒い紗幕(カーテン)をする場合があります。
こうしてしまうと、ホリゾントの色は出せませんので、事前に使えるのかを確認しましょう!
ピンスポットライト(ピンスポ)
動いている人についてきてくれる照明のこと
大きなコンサートなどで、アーティストをずっと追っかけている丸い形の光がありますよね。
これを「ピンスポットライト(ピンスポ)」と呼びます
動いている人についてきてくれるので、バレエ作品などでは主役や主要人物を引き立たせるために使用されます。
またソロ作品や、群舞の途中のソロなどをピックアップするのにも使用されます。
照明案に書く場合は
2分40秒から下手側のダンサーがソロを踊るのでピンスポください。
という感じで伝わるはずです。
また、照明案に書かなくても照明デザイナーさんが必要と判断した時は点けてくれます!
小劇場やライブハウスなどでは、ピンスポットライトの設備がない場合も多いです。
ダンス発表会をやるような劇場ならまず設置されていると思いますが、不安な場合はスタッフ見せの際に「ピンスポありますか?」と照明デザイナーさんに聞いてみてください。
SS(エスエス)
ステージの袖幕に設置してある照明のこと
ステージの横に設置してある照明を「SS(エスエス)」と呼びます。
サイドスポットライトの略です。
横からの明かりは、ダンサーをより立体的に見せてくれる効果があります。
照明案にあえて書かなくても、シーンや演出によって照明デザイナーさんが調整しながら出してくれるので、あまり気にせずお任せするのが良いと思います。
SUS(サス)
みんながよく言う王道スポットライトがコチラ
舞台の上から降り注ぐ1筋の光!
スポットライトと言えばこれを思い浮かべる方も多いと思いますが、「ピンスポットライト」との混合を防ぐためにも「サス」と呼ぶようにしましょう。
印象的なシーンを作るのに非常に効果がある照明ですよね。
照明案に書くならば
1分15秒~1分25秒まで、センターにサスをください
と書くとわかりやすいと思います。
ムービングライトを導入できるならば基本的に問題ないと思いますが、発表会全体の照明要望でサスが多すぎたり、劇場の設備や電力の関係で、希望に沿った場所にサスを作れない場合もあります。
その場合は照明デザイナーから相談されたり、ピンスポで代用する可能性もあります。
内ブッチ
ちょっと大きめのサスのこと
先ほど紹介したサスは「1筋の強い光」というイメージでしたが、それをもう少しワイドにしたものを「内ブッチ」と呼びます。
スマートな強い光ではありませんが、もう少し広い範囲をボワっと照らしてくれるものです。
特に照明案に「内ブッチください」と書かなくても真ん中にダンサーが集まったりしたときはこれを使ってくれることが多いです。
バックライト(目つぶし)
後ろからの強い光のこと
後ろからの強い光の事を、「バックライト」または「目つぶし」と呼びます。
ステージ上の後ろに設置された照明で客席を照らすことで、印象的な演出ができます。
ストリートダンスの発表会では、特にこの要望が多いです。
フットライト
背景に影を出せる照明のこと
舞台前の足元に設置される「フットライト」は、背景(ホリゾント)に演者の影を出すことができる照明です。
様々なジャンルのダンスに使用されます。
また、正面以外にも下手前・上手前に設置することで、ステージ上の人数より多い影を出すこともできます。
ホリゾントの所で紹介したように、劇場の構造や発表会によっては、ホリゾント幕を使用せず黒い紗幕(カーテン)をする場合があります。
こうしてしまうと、フットライトの効果も変わってくるので、事前に使えるのかを確認しましょう!
さいごに
「発表会の照明案の書き方は?」
「舞台照明の種類について知りたい!」
今回は、このような疑問について解説してきました。
照明案で、自分のイメージを照明さんに伝えるのってとても不安ですし、難しいですよね。
そんな時は、ぜひ今回の記事も参考にしてみてください!