マグラダのマリアってどんな人?
マグラダのマリアは娼婦だったって本当?
西洋絵画でマグラダのマリアのアトリビュートはなに?
今回はこのような疑問について解説していきます。
マグラダのマリアは、新約聖書に登場するイエス・キリストに従っていた女性です。
現在は正教会・カトリック教会・聖公会で聖人とされています。
西洋絵画では度々モチーフにされているので、気になる方も多いのではないでしょうか?
今回は、マグラダのマリアについて解説していきます!
マグラダのマリアとは
マグラダのマリアは、紀元後1世紀に存在した女性といわれています。
聖母マリアと並んでキリスト教の信仰の対象で、西洋の芸術のモチーフとして人気がある存在です。
でもそのイメージは多様で、時代により大きく変化してきました。
共観福音書ではこのように記載されています。
このように、イエスの磔刑を見守り、復活したイエスを目撃した人物とされています。
一方西方教会では、聖書に登場する罪深い女とされ、売春婦といわれることもあります。
西洋絵画で様々な描かれ方をしているのは、マグラダのマリアの歴史的扱いが変化しているからなんです。
マグラダのマリアの生涯を追う
ここからは、聖書に基づいてマグラダのマリアの生涯をご紹介していきましょう。
マグラダのマリアは、聖書での登場回数が少なめです。
イエスと出会う
マグラダのマリアの最初の登場シーンがこちら。
また悪霊を追い出され病気をいやされた数名の婦人たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラと呼ばれるマリヤ、ヘロデの家令クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか多くの婦人たちも一緒にいて、自分たちの持ち物をもって一行に奉仕した。
ルカによる福音書8章2節
イエスが7つの悪霊を追い出したシーンです。
これをきっかけに、マグラダのマリアはイエスにお仕えすることになります。
イエスの磔刑を見守る
次にマグラダのマリアが登場するのはイエス磔刑のシーン。
折から、イエスと一緒に二人の強盗が、一人は右にもう一人は左に、十字架につけられていた。
マタイによる福音書27章38節
そんな中マグラダのマリアと他の女性たちはイエスの磔刑を見守ります
またそこでは、大勢の婦人たちが遠くから見守っていた。この婦人たちは、ガリラヤからイエスに従って来て世話をしていた人々である。 56その中には、マグダラのマリア、ヤコブとヨセフの母マリア、ゼべタイの子たちの母がいた。
マタイによる福音書27章55・56節
イエスが亡くなり、埋葬されるまでを見届けたのがわかります。
マグラダのマリアともう一人のマリアとはそこに残り、墓の方を向いて座っていた。
マタイによる福音書27章61節
イエスの復活に立ち会う
イエスが亡くなってから3日目の早朝の事。
イエスの墓を訪れたマグラダのマリアは、イエスの遺体に香油を塗り埋葬の準備をします。
そうすると、なんとお墓の入り口にあった石が取り除いてあるのを発見しました。
週の初めの日、朝早く、まだ暗いうちに、マグダラのマリアは墓に行った。そして、墓から石が取りのけてあるのを見た。
ヨハネによる福音書20章1節
マグラダのマリアは、イエスの遺体が何者かに盗まれたと思い、お墓の外に立って泣き始めました。
その後マグラダのマリアはが振り向くと、そこには亡くなったはずのイエスが立っていて、彼女に語りかけました。
そしてイエスの弟子たちに、イエスの復活とその言葉を弟子たちに伝えに行きました。
マグラダのマリアが娼婦とされた理由
マグラダのマリアは、西方教会では罪深い女と解釈されています。
この理由は、ルカによる福音書に登場する罪深い女という人物が、マグラダのマリアと同一人物だとされていたからです。
罪深い女とは
罪深い女は、ある時パリサイ人の指紋の家にいたイエスのところにやってきました。
彼女は泣きながらイエスの足に涙を流し、髪の毛でそれをぬぐってから。その足に口づけをして香油を塗りました。
この町に一人の罪深い女がいた。イエスがファリサイ派の人の家に入って食事の席に着いておられるのを知り、香油の入った石膏の壺を持って来て、 後ろからイエスの足もとに近寄り、泣きながらその足を涙でぬらし始め、自分の髪の毛でぬぐい、イエスの足に接吻して香油を塗った。
ルカによる福音書7章37・38節
普通なら奇妙に思いますよね。
イエスを招待したファリサイ派の人はこれを見て、「この人がもし預言者なら、自分に触れている女がだれで、どんな人か分かるはずだ。罪深い女なのに」と思った。
ルカによる福音書7章39節
このように、周りの皆さんも同意見のようです。
しかしイエスは、この女性を褒められたのです。
つまりこの女性がイエスにしたことは愛の行為で、彼女の罪が許されている証拠という事。
この女性の罪は、性的なものだったとされているため、伝統的にマグラダのマリアは娼婦だと説明されています。
罪深い女として描かれてきたマグラダのマリア
実際、キリスト教の映画では娼婦として扱われることが多いです。
西方教会が罪深い女としていたことから、ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」でも、イエスとマグラダのマリアは結婚していたなど、様々な物語が生まれていますね。
ちなみに筆者は「ダ・ヴィンチ・コード」大好きです。
ダン・ブラウンの作品は絵画ファンとしてもたまりませんよね!
つまりマグラダのマリアは罪深い女性だったけど、イエスとの出会いで改心して聖女になったという事ですね。
だからこそ現在は聖人として扱われているのでしょう。
西洋絵画でマグラダのマリアを見よう
先述の通りマグラダのマリアは、西洋のキリスト教美術において聖母マリアと並ぶ人気を誇っています。
超越的な奇跡的存在の聖母マリアに対し、エモーショナルな存在を象徴するのがマグラダのマリア。
聖母と共に重要な場面に登場するマグラダのマリアは、キリスト教においての愛のありようを相互補完的に表しています。
ここから紹介していく絵画も、懺悔・改悛がテーマになった作品ばかりです。
マグラダのマリアのアトリビュートは?
西洋絵画で、どの人がマグラダのマリアが理解するには、2つの目印を確認しましょう。
絵画の中の人物の目印(持物・じぶつ・じもつ)はアトリビュートと呼びます。
マグラダのマリアのアトリビュートはこちら。
- 香油壺
- 髑髏
この2つがマグラダのマリアのアトリビュート。
アトリビュートを理解すると、西洋絵画がもっと楽しく鑑賞できるのでお勧めです。
ぜひ参考にしてみてください!
ここからは有名な作品をご紹介していきます。
エル・グレコ
こちらはエル・グレコが描いたマグラダのマリア。
香油壺と髑髏もしっかり描かれています。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
こちらは17世紀の画家ジョルジュ・ド・ラ・トゥールが、1638年から40年ごろに描いたマグラダのマリア。
ラトゥールは描いた4点の「悔悛するマグラダのマリア」のなかの一つです。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1560年代に描いた作品。
官能的なマグラダのマリアの姿は娼婦のイメージにあっているように感じます。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
今回は、マグラダのマリアってどんな人?
また、西洋絵画におけるマグラダのマリアをご紹介しました。
現在は聖人とされているマグラダのマリアですが、娼婦として認知されていた時代もあります。
まだまだ謎に包まれたミステリアスな存在である彼女は、これからも私たちの好奇心を掻き立ててくれるに違いありません。